臥龍山のあがりこ(奇形ブナ)

所在地:広島県山県郡芸北町東八幡原
出典:梅原猛ほか13名著 ブナ帯文化 1995年新装版 新思索社

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あがりこの森というと鳥海山の中島台のブナ林が有名です。ブナのあがりこについては、梅原猛ほか
13名による著作「ブナ帯文化」に詳しく解説されています。太田威が執筆されている「ブナの森の民と
生活技術」から以下引用します。

ブナのあがりこ

 森の陽ざしや雨が雪を溶かし、足で踏んでもぬからぬ固雪に変わる。村の人々はかつてこの時期、
ソリを引いて奥深いブナの森に盗伐に入った。昔は天領で自由に伐った。今は国有林となり、胸高
13センチ以上の木を伐ると盗伐になる。監視の目をのがれ、雪の上から突き出たブナの枝を伐り
落し、薪や鍛冶炭にしてソリにつけ、部落に持ち帰った。薪や炭は町で売りさばいて日用品を買い、
生活のたしにした。この行為は、燃料が薪や炭から石油に変わる明治の終わりごろまで続いた。

 やがて伐られた部分は癒合し、大小のグロテスクなコブとなる。伐られた部分から萌芽し、生長して
ゆく。村人のこの行為は長年にわたって繰り返され、ブナのモンスターになった。こうしたブナの樹を
地元では「ブナのあがりこ」とよぶ。それは、ブナと人間とが豪雪とのかかわりあいのなかから
生みだした東北独特のブナの姿である。


以上のような解説がなされていますが、ここ中国地方の臥龍山のブナ林にも「ブナのあがりこ」と同じような
ブナが見られます。中国地方ではたたらが発達した関係で、砂鉄を溶かす燃料の木炭を生産するために
伐採されたと考えられます。

たたらとは

たたらとは日本古来の製鉄法のことを言います。
以下、日立金属株式会社のHPに掲載されている「たたらの話」から引用します。

たたら製鉄は鉄原料として砂鉄を用い、木炭の燃焼熱によって砂鉄を還元し、鉄を得る方法です。
たたら製鉄には2つの方法があります。1つは砂鉄からいきなり鋼を作るケラ押し法(直接製鉄法)、
もう1つはズク(銑鉄)を作ることを目的とするズク押し法です。

ケラとは、鋼のもとになる塊で、ご存知のように鋼は叩いたり、伸ばしたりして鍛えることができ、
しかも焼きを入れて硬くすることができますので、日本刀をはじめ、刃物、工具などに用いられて
きました。

ズクは炭素量が高く、溶け易いので鋳物にも用いられますが、大部分は大鍛冶場(おおかじば)に
運ばれて炭素を抜き、左下鉄(さげがね)と呼ばれる鋼や、さらに炭素を下げて軟らかくした
包丁鉄にされました。


また、「木炭」については次のように解説されています。

一般使用の木炭は、高温度(約1000℃)で焼いた堅い白炭、低温度(400〜800℃)で焼いた
軟らかい黒炭、それに消炭に分けられますが、たたらで用いる炭は少し違っていました。
たたらでは炉で鉄を製錬するのに用いる炭を大炭、鍛冶に用いる炭を小炭といいます。大炭は
黒炭に似た方法でつくりますが、焼く温度がさらに低く、半蒸のものが多く、炭としての質は
劣悪なものです。それは固定炭素が少なく(60%以下)、揮発分が多い(30%以上)方が、火力
を上げるのに都合が良かったからです。

「鉄山秘書」によれば大炭には松、栗、槙、ブナが良く、しで、こぶし、桜は悪く、椎、サルスべリは
最悪としています。そのほかクヌギ、楢、雑木も良く使われています。小炭としては松、栗、栃、
杉は至極上々で、しで、椎、槙、樫(かし)、橿(もちのき)は良くないとされました。小炭の焼き
方は地面を掘り込んだ凹地に木を積み、火をつけ、燃え尽きんとする時に柴木、笹や土を打ち
かけて蒸し焼きしました。小炭の場合、生木からの歩留は約10%、大炭の場合は約20%です。


このように、大炭としてブナが利用されたことがわかります。実際に、臥龍山のブナがたたらに利用されたか
どうかは筆者の勉強不足で分かっていません。

日立金属株式会社のHP たたらの話 http://www.hitachi-metals.co.jp/tatara/index.htm

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